『分裂』La fracture【感想・レビュー】ネタバレ少し含みます。

2021年11月14日日曜日

フランス映画祭 映画祭

t f B! P L

 

(C)DR (C)CHAZ Productions

第74回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門
フランス映画祭2021横浜
にて上映

スタッフ staff

監督:カトリーヌ・コルシニ Catherine Corsini

出演 Cast

ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ Valeria Bruni Tedeschi:Raphaelle Catania dite Raf
マリナ・フォイス Marina Fois:Julie Bataille
ピオ・マルマイ Pio Marmai:Yann Caron

あらすじ

ラフとジュリーは、破局寸前のカップル。ある日、転倒して腕の骨を折ったラフは、救急に運ばれ、ジュリーも駆けつける。その日は、パリで「黄色いベスト運動」の大規模デモがあり、救急はデモで怪我をした人々で溢れていた。長い待ち時間の間に、ラフはデモで足を怪我したヤンと知り合い、自分の偏見や思い込みに気づく。病院の外では、デモ隊と警察の攻防がさらに激しさを増し、病院は臨時閉鎖されることに。病院内は更に混乱し、長い夜は続く…。(フランス映画祭2021横浜公式HPより抜粋)

ドキュメンタリーとフィクションの狭間

第77回ヴェネチア国際映画祭(2020)金獅子賞を受賞した『ノマドランド』は、多くの「ノマド」が実際に出演し、ドキュメンタリー的な映像を生み出していたが、この作品も多くの「素人」が登場し、見事にドキュメンタリー的なリアリティの演出に成功している。フィクションで描かれるドラマ以上の事件が起きる現代において、ドキュメンタリー作品がフィクションを凌駕するドラマをみせることも多くなり、その境界が曖昧になってきた。同じフランス映画祭で、2019年に上映された『社会の片隅で』(Les Invisibles)は、ホームレスシェルターを描いた作品だが、「素人」が出演ではなく、役者がリアルなシェルターに潜入して、撮影していて、衝撃を受けた記憶がある。この先も、境界を行き来する映画が注目を集めることは、続きそうだ。

誰と誰、何が「分裂」するのか

この作品の舞台は救急病院であり、いかなる方であっても分け隔てなく医療が提供される。一方で、「黄色いベスト運動」では、警察とデモ隊が対立している。病院という敷地の内外で、同じ人間であるにもかかわらず、言動や行動が異なる人々。病院の中では、患者の置かれた境遇も様々、医療を提供する医師、看護師にも家族がいて、当然ながら多様性に満ちているが、病院の外では「分断」されている人々が、病院の中では同じ場所を、治療を受けることで、それぞれの立場を理解し、支えあう。果たして、いったい何のために「分裂」しているのか。

緊張と緩和

舞台は、死と隣り合わせの救急病院。さっきまで生きていた方が、次の瞬間、死んでいる。必然的に、そこで生み出されるドラマには、映像には緊張感が伴う。一方で、この作品の中では、ふと笑顔になるシーンが意図的に挿入されている。極限状態であっても、人と人が理解し、笑いあえる姿を描く一方で、観客には、程よい緊張の緩和のリズムを貰たしている。このバランスが絶妙である。

作品全体として

この作品を観る前に、東京フィルメックスにおいて『時代革命』を観ていたこともあり、デモとその影響を受けた人々の姿が再び想起され、一見平和にみえる日本においても、過去に起きていた分裂・分断が再び起きる可能性について、考えざるを得ない。そんなことを考えさせる素晴らしい作品。

『分裂』フランス映画祭2021横浜 作品紹介ページ
https://www.unifrance.jp/festival/2021/films/384/

『分裂』La fracture(IMDB)
https://www.imdb.com/title/tt13321730/

(Life with movies 編集部:藤井幹也

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