Life with movies 『盗まれたカラヴァッジョ(仮題)』Una storia senza nome【感想・レビュー】
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『盗まれたカラヴァッジョ(仮題)』Una storia senza nome【感想・レビュー】

『盗まれたカラヴァッジョ(仮題)』Una storia senza nome【感想・レビュー】


スタッフ

監督・脚本:ロベルト・アンドー Roberto Ando
脚本:アンジェロ・パスクイーニ Angelo Pasquini、ジャコモ・ベンドッティ Giacomo Bendotti

キャスト

ミカエラ・ラマッツォッティ Micaela Ramazzotti:Valeria Tramonti
アレッサンドロ・ガスマン Alessandro Gassman:Alessandro Pes

あらすじ・作品解説

『ローマに消えた男』などの名匠ロベルト・アンドー監督が実在の事件を元に描くサスペンス。映画プロデューサーの秘書ヴァレリアは、人気脚本家アレッサンドロのゴーストライターを務めている。ある日、彼女のもとに謎めいた男が近づいてきて、1969年から未解決のカラヴァッジョの名画盗難事件について教えてくれた。興味を引かれた彼女は事件をシナリオに起こし始め、それがアレッサンドロの次回作として採用されることに。しかし、そのことが原因で彼女たちは事件に巻き込まれてしまう。(イタリア映画祭2019公式サイトより)

2019年4月27日(土曜)上映後Q&Aより(ネタバレ含みます)

ロベルト・アンドー監督(以下、監督)

以下、観客からの質問

:ストーリーをどのように組み立てていったのでしょうか。
A(監督):この映画は、私が愛している映画のオマージュでもあります。現実にあった事件を元にしているのですが、改心したというマフィアが後年語った証言では、整合性が取れず、事実が解明されていません。ゆえに、今回は、「嘘」を作品のテーマのひとつとしています。また、作品中の映画は、犯罪者をおびき寄せるための罠であり、餌です。この物語を創る中で、人の想像力が真実を突き止めていくということも、面白いのではないか、と考えていました。

:黒澤明の『羅生門』の影響があるように感じましたが、観られていますか。
A(監督):当然、観ています。『羅生門』は傑作であり、及びません。

:この作品自体が、犯罪組織への挑発的な部分もあるのでしょうか。
A(監督):現代では、マフィアが本物か偽物か、わからなくなっています。先日、報じられたニュースによれば、反マフィア組織の中に、マフィアの潜入員がいたらしいです。この作品では、何が本当かわからない現代の状況を表現したいと考えていました。作中に国家とマフィアが裏取引するシーンがあるが、同じ犯罪でも、テロは衆目に晒されるが、裏取引は晒されません。絵画や芸術作品も唯一のもので保護されるべきだが、人の命も唯一無二のものでしょう。反マフィアで命を失った方々の命も唯一無二でしょう。

:イエジー・スコリモフスキ監督が、映画監督役で出演されていますが、キャスティングの理由や交流の有無を教えてください。
A(監督):この作品は、映画の中で映画を製作しているが、その監督を演じるのは、できれば、本物の映画監督に演じて欲しいと考えていました。ヴェネツィア国際映画祭に審査員として出席していた際に、金獅子賞を受賞したイエジー監督と食事をする機会があり、その時に依頼したら、快諾してくれました。とても嬉しかったです。

:『ナポリの恋人』のキャストが共演していますが、キャスティングした理由を教えてください。
A(監督):レナート・カルペンティエリは、名優。最近、共演する機会はなかったが、舞台では何度か共演しています。ミカエラ・ラマゾッティは、今回初起用。昔のアメリア映画に出演しているような雰囲気を持つ女優を探していた。彼女は、悲劇での演技が有名だが、コメディも演じることが出来る素晴らしい女優です。ユーモアのセンスもあります。難しいシーンでも、彼女の演技で現実味を出すことが出来ました。

:作品中に、ラース・フォン・トリアー監督の作品が気に入らないというセリフがありますが、洒落ですか。
A(監督):(笑顔で)私のコメントです。心の底から嫌いです。ヒッチコック監督の言葉に「映画とは、退屈な部分がカットされた人生である」という名言があるが、彼の作品では、退屈な部分を延々と観させられるから。

:テーマが、実際に起きた絵画の盗難事件だが、マフィア等からの圧力などはなかったでしょうか。
A(監督):まったくありません。彼らが圧力をかけるのは、自分たちの利益を損なおうとするもの、もしくは、ジャーナリストのような存在。映画は、まったく異なるものです。米国でマフィア映画が人気を博した時、彼らは自分たちがモチーフだと喜んでいた。ただ、映画が生み出す文明や文化、価値観が後年に影響していくことを彼らは評価していないので、圧力はないが、実際には、影響を及ぼすことになっています。

「嘘」の多重構造

主人公のヴァレリアは、ゴーストライターで脚本を偽っているが、この物語の中では、多くの「嘘」が展開されていく。偽の脚本、贋作だけでなく、誰が味方か敵か、主人公の父親のスピーチに至るまで「嘘」が散りばめられている。物語の後半にかけて、スピード感が上がる中で、明らかになる「嘘」もあるが、観客の想像力に委ねられるものもある。2度、3度観ることで、監督が仕掛けた罠に気づくことができるだろうか。

フィクションを演じる俳優

この物語は、実際に起きた事件をベースにしているが、当然だが、演じているのはすべて俳優である。俳優は、フィクションにリアリティを与える存在だが、この物語では、さらにフィクションの中でも「嘘」を演じているので、どこまでが「リアリティ」なのか、までがわからなくなる。特に、登場人物の間での恋愛模様においては、事件ではないが、「嘘」が過分に含まれている。果たして、どこまでが「嘘」なのか。監督の張り巡らせた罠を見破ることは容易ではない。

作品全体として

実際の事件を元に、「嘘」が蔓延する世界の在り様に問題提起をしている作品でありながら、高度に練り込まれたサスペンスでもある素晴らしい作品。物語の土台となった「絵画盗難事件」※も予習した上で、この作品を観ることで、「嘘」と「真実」の境界線がもう少しわかるかもしれません。おススメ作品。

※サン・ロレッツォ同信会祈祷所から、1969年に『キリストの降誕』が盗難され、現在も発見されていない。

『盗まれたカラヴァッジョ(仮題)』Una storia senza nome IMDB
https://www.imdb.com/title/tt7238112/

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