Life with movies 『女性の名前』Nome di donna【感想・レビュー】
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『女性の名前』Nome di donna【感想・レビュー】

『女性の名前』Nome di donna【感想・レビュー】


スタッフ

監督・脚本:マルコ・トゥッリオ・ジョルダーナ Marco Tullio Giordana
脚本:Cristiana Mainardi

キャスト

クリスティアーナ・カポトンディ Cristiana Capotondi:Nina
ヴァレリオ・ビナスコ Valerio Binasco:Marco Maria Torri

あらすじ・作品解説

『輝ける青春』の巨匠ジョルダーナの最新作は、セクシャル・ハラスメントをテーマに、権利と尊厳を守るために立ち上がる一人の女性の物語。高齢者向けの豪華なケアハウスで働くために、シングルマザーのニーナは娘と共にミラノから地方の小さな村へ移り住む。職を得てほっとするが、すぐにケアハウスのマネージャーによるセクハラが横行していることを知る。この状況を是正しようとする行動を取るが、マネージャーの強大な権力の壁に阻まれ、職を失いたくない同僚からも孤立する。(イタリア映画祭2019公式サイトより)

2019年4月28日(日曜)上映後Q&Aより(ネタバレ含みます)

マルコ・トゥッリオ・ジョルダーナ監督(以下、監督)
以下、観客からの質問

(司会者より)
:なぜ、このタイミングでこの作品を制作したのか。
A(監督):上映する時期が、「MeToo」が広がった時期に重なったのは、偶然。それ以前から製作していました。ただ、製作する時期は、2000年遅かったね。こういう問題に口を閉ざしてきた歴史が、ようやく動き出しました。ただ、今取り出さされている論点として、女性と男性の間の問題として語られているのは、個人的には違和感があります。この問題は、「権力を持つもの」と「権力を持たないもの」の問題だと考えています。世界的に、まだ多くの国、社会において、男性が権力者であるケースが多く、結果、男女の問題にみえているのではないでしょうか。

以下、観客からの質問
:この作品を製作することで、社会へどのようなメッセージを伝えようとされたのでしょうか。また、イタリアの社会へ影響はありましたか。
A(監督):イタリアでは、20年前に諸外国より進んだ法律が制定されています。モラルとしてではなく、個人の責任としての法律。この作品は、事実を元にしていますが、この作品の中でも、個人の罪を問うています。これは、この法律があるからです。それ以前は、文化的な問題とされ、個人の罪とはされませんでした。しかしながら、作品でラストシーンで描いていますが、根絶するのが難しい問題でもあります。主人公・ニーナは立ち上がって勝利していますが、その周りには多くの敗北がある。ニーナを排斥した同僚や過去の犠牲者を闇に葬った人は、敗北者でしょう。脚本のベースを読んだ時、加害者の娘が恥じるシーンがこの作品の救いであると感じました。

:水色の介護のユニフォームがありますが、何かの象徴として採用されたのでしょうか。
(監督):(笑顔で)イタリアのファッションですよ。

:施設の中で老女の机の上にヴィスコンティの写真があったが、映画界を示す暗示か何かでしょうか。
A(監督):まず、老女を演じたアドリアーナ・アスティ(Adriana Asti)は、私が大好きな名女優です。『輝ける青春』で母親役をしていましたよ。彼女は、まだ現役の女優なので、あのシーンはドキュメントではありません。彼女の机には、彼女が共演したり、関係した人物の写真を配置したいと考えました。それ以外のものもありますし、黒澤の写真もあったのに気が付きましたか。彼女のセリフの中で「かつてはお世辞といったのよ」がありますが、ショービジネスの世界では巧みにかわしていかないといけませんでした。近年の「MeToo」の動きは、世界的な知名度のある方が発言したことが、リスクもある中で、大きなことだし、素晴らしいことです。

:日本では110年ぶりに刑法が大きく改正されたが、まだ充分なものではありません。この半年の間でも、話題にもなっていますが、加害者が無罪になっています。この問題は、女性が声を上げるだけでは解決できる問題ではないと考えています。
A(監督):映画には、いろんな作品の形があります。過去、現在、未来の課題を描いていきます。ただし、現実には、社会を変えていかないといけないし、法令は弱者を守るべきです。この作品の脚本家・クリスティア-ナ(Cristiana Mainardi)(※監督もダブルクレジット)。彼女がいなかったら、ここまでこの問題を切り込めなかった。彼女が知人や多くの方から聞き取ってくれたことが、脚本の生かされています。このストーリーへの賛辞は、80%は彼女に贈られるべきです。

日常から引き込まれるストーリー

時に社会問題を扱った作品は、観客に衝撃的に魅せるために、ショッキングなシーンから物語を導入したりするが、この作品は主人公・ニーナのリアルな日常のリアリティを中心に導入しているので、自然で、そして、現実とリンクした印象を観客に与えている。この問題は、我々の隣で起きているということを感じさせてくれる創りになっている。

日本では製作されない物語

監督も少し話されていましたが、このテーマで作品を製作するにあたり、資金集めが苦戦されたとのこと。商業作品である以上、マネタイズを製作サイドは考えるのは当然だが、製作する社会的な意義も踏まえ、強力を得られたとのこと。逆にいうと、日本の投資家、製作会社、配給会社は、この問題の社会的意義を低くみているので商業作品として制作されないということであり、マネタイズでないということは、私たち、映画ファンが社会問題を取り扱ったものを観ない傾向にあるからだろう。まずは、私たちがこれらの作品を大きく動員することで、日本の映画界に一石投じる必要があるのではないだろうか。

作品全体として

ストーリーはシンプルで、奇をてらった部分はない。ただ、前半の時間から物語のテーマが観客に緊張感を与え続けることで、最後まで物語に没入することが出来、また、主人公に共感することができる。この作品を製作した監督、脚本、そして、イギリス映画界を尊敬するもので、日本社会を恥じるべき作品。おススメ。

『女性の名前』Nome di donna IMDB
https://www.imdb.com/title/tt8009522/

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