Life with movies 『テルアビブ・オン・ファイア』Tel Aviv on Fire【感想・レビュー】
Life with movies

『テルアビブ・オン・ファイア』Tel Aviv on Fire【感想・レビュー】

『テルアビブ・オン・ファイア』Tel Aviv on Fire【感想・レビュー】


第75回 ヴェネツィア国際映画祭 作品賞
第31回 東京国際映画祭 コンペティション部門


スタッフ

監督:サメフ・ゾアビ Sameh Zoabi

キャスト

カイス・ナーシェフ Kais Nashif:Salam
ルブナ・アザバル Lubna Azabal:Tala
ヤニブ・ビトン Yaniv Biton:Assi

あらすじ

サラムはエルサレムに暮らすチャーミングな30歳のパレスチナ人。
「テルアビブ・オン・ファイア」という人気メロドラマの制作インターンをしている。撮影所に通うため、毎日毎日、面倒なイスラエルの検問所を通らなくてはならない。ある日、検問所の主任アッシと知り合う。ドラマの熱烈なファンである妻に自慢するため、アッシはドラマの脚本に関わることに。アッシの脚本案で、サラムは正式脚本家に出世することになった。サラムの業界でのキャリアアップに火がつくが、アッシとスポンサーがドラマの結末に不満を抱く。(第31回東京国際映画祭公式HPより)

10月26日(金曜)上映後Q&Aより(ネタバレ含みます)

サメフ・ゾアビ監督(以下、監督)
ヤニブ・ビトン(以下、ビトン)
聞き手:矢田部吉彦プログラミング・ディレクター「コンペティション」担当

監督は、冒頭挨拶として「今回、日本に来るのは初めてだ。6年を費やした映画が上映されるので、ワクワクしている。多くの国の映画祭に参加できて、光栄」と話し、ビトン氏は観客席から登場し「完成した作品を観たのは、今回で2度目(会場で観ていた)。1回目は、ヴェニスの映画祭で、今回が2度目。日本人の観客の方に理解いただけるかなと心配していたが、上映中にクスクス笑いが聞こえてきて、安心したし、嬉しかった」と話した。また、監督は、自身の説明として、イスラエルで生まれたパレスチナ人。イスラエルで生まれたので、パスポートも持っている。大学で映画を学び、前作に続き脚本も担当している。いつも、コメディで政治的な問題を描いているが、深刻な問題をシリアスに描くより、自由度が高く描きやすいと考えている」と説明した。

Q(矢田部):ソープオペラ(日本でいう昼メロ)を使う着想はどこから?
A(監督):そもそもソープオペラが好き。子供の頃は、エジプト製作のものをよく見ていた。家には、テレビが1台しかなく、そのチャンネル権は、母が持っていたけどね。ソープオペラは、非日常的だが、映画は「リアル」を追求することが多い。そのため、ソープオペラ内で表現すると、普通は言えないことが、ソープオペラのセリフとして言えるので、その分だけ自由に表現することができる。

Q(矢田部):このシナリオを読んで、すごいと思いましたか?
A(ビトン):もちろんだ。深刻な社会情勢を見事に描いてくれた。自分が出演を決める時には、2つの基準がある。1つ目は、政治的な部分で、自分のイデオロギーに沿っているかどうか、2つ目は、俳優として、自分が演じるキャラクターに魅力があるかどうかだ。今回は、どちらもクリアしていた。

以下、観客からの質問
:この作品のようにヘブライ語(イスラエル公用語)を話せないパレスチナ人が作ったりしているのか。
A(監督):現実は、逆が多い。イスラエル人がアラブ人役を演じ、おかしなことが多いので、今回はその逆の形を作ってみた。

:主人公がラストを改変しようとするが、それは、自爆テロへの監督の想いがあったのか?
A(監督):新しい世代へある種の声を届けたかった。軍の統制や検問、地域を隔てる壁などを作品の中で描きつつ、この国はこれからどこへ行くのかということを提示した。イスラエル人とアラブ人の結婚式を描くことが解決ではない。

:イスラエルからストップはかからなかったのか?
A(監督):最初から説明しましょう。1948年にイスラエルが誕生した頃から現地へ住んでいた人が25%がいる。そして1967年からガザ地区など大きな問題が生じている。自分と家族はヘブライ語を話すし、パスポートを持っている。主人公と同じ。新しい世代にとって、現在起きていることは、秘密裡に行われていることではなく、SNSなど明らかになっている、しかし、それらのことを認めつつも、改善はされていない。私は、映画を通して、頬を叩くのではなく、くすぐるようにしたい。痛くなるほど、くすぐりながら、現実を伝えたいと考えている。

:イスラエルの軍人が、フムスを要求するシーンがあるが、どこでも食べられないのか?
A(監督):フムスは、パレスチナの郷土料理だ。イスラエル人は、パレスチナへ行った時に、初めて知ったもの。我々は、生まれた時から食べているものなので、わざわざレストランで食べるようなものではないと考えている。イスラエル人は、パレスチナ文化を否定しつつ、フムスを好む、つまり、食文化は評価をするという矛盾を描きたかった。
A(ビトン):私の周りにも、フムスへの憧れを持った友人がいる。他の国での上映でも、フムスを食べるシーンでは、笑いがこぼれていた。

今現在も続いている問題をコメディを通して伝える力

現在、軍による統制、検問、地域を隔てる壁がある中で、まずは、この作品を描いた監督に敬意を表したい。そして、コメディという形を使うことで、見事に問題提示を行っていることが素晴らしい。政治的な問題でもあるが、自分達や今後育っていく若い世代にとっては、生きていく国であり、社会の問題を、厳しい課題であるゆえにシリアスに捉えるのではなく、ユーモアを通して、国内外へ伝えている。

自然に感じたい

日本をはじめTV文化のある国なら理解できるだろう「ソープオペラ」を使い、また、フムスという食を使い、つまり「文化的な共通項」を使うことで、イスラエルの抱える社会的課題を自然に理解できる創りになっている。コメディ作品なので、肩ひじ張らずに観て欲しい。厳しい、難しい課題は、観たあとに学んでもいい。

この作品を招待した東京国際映画祭は、素晴らしいし、また、この作品が多くの国で上映されることに、意味がある。そんな作品。おススメ。

『テルアビブ・オン・ファイア』東京国際映画祭作品紹介ページ
https://2018.tiff-jp.net/ja/lineup/film/31CMP13

『テルアビブ・オン・ファイア』Tel Aviv on Fire(IMDB)
https://www.imdb.com/title/tt5791098/


特集 第31回 東京国際映画祭 31st Tokyo International Film Festival
https://www.lifewithmovies.com/2018/10/tokyo-international-film-Festival.html

0 件のコメント :

コメントを投稿