Life with movies 『海だけが知っている』Long Time No Sea【感想・レビュー】
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『海だけが知っている』Long Time No Sea【感想・レビュー】

『海だけが知っている』Long Time No Sea【感想・レビュー】


第31回 東京国際映画祭 アジアの未来部門

スタッフ

監督:ツイ・ヨンフイ Heather Tsui

キャスト

ホァン・シャンホー Shang-Ho Huang:Zhong-Xun Yu
ジョン・ジアジュン Pangoyod Si:MA Na-Wei
リー・フォンイン Feng-Ying Lee:Grandmother

あらすじ

美しい海に囲まれた台湾東部の離島・蘭嶼(らんしょ)の小学校に、新任教師ヨウ・ジョンシュンが赴任する。彼が受け持つクラスの少年マナウェイは祖母とふたり暮らし。父親は台湾本島に出稼ぎに行って不在である。そんな折、高雄で行われる先住民児童伝統舞踊コンクールへの出場を目指す話が持ち上がる。ジョンシュンは本島に戻るきっかけを掴むため、そしてマナウェイは父親の近くに行くため、それぞれの理由で練習に励み、ついに出場の切符を手にするが…。(第31回東京国際映画祭公式HPより)

10月27日(土曜)上映後Q&Aより(ネタバレ含みます)

ツイ・ヨンフイ監督(以下、監督)
ジョン・ジアジュン(以下、ジョン君)
リー・フォンイン(以下、リー)

聞き手:石坂健治プログラミング・ディレクター「アジアの未来」担当

Q(石坂):撮影から、少し時間が経っているように思えますが。
A(監督):撮影から2年経ち、ジョン君は14歳になった。

Q(石坂):TVのドキュメンタリーを撮っていたとお聞きしていますが、なぜ、この作品を撮影したのか。
A(監督):この作品の準備に6年かかった。最初は観光で蘭嶼(らんしょ)へ行った。その時、学校の先生を主人公にした物語を撮影したいと思った。2010年から2016年のクランクインまで、何度も島へ足を運んで、ショートフィルムを撮影しながら、地元の方へ演技指導した。

以下、観客からの質問
:ジョン君の撮影の苦労話はあれば、教えてください。
A(ジョン君):それほど苦労は感じず、楽しく撮影できた。
(監督)彼は、芝居をするのが好きで、次の日の撮影が待ちきれず、朝、開始前に呼びに来られたぐらい。そのため、多少の苦労はものともせずにチャレンジしてくれた。ただ、劇中の川へ飛び込むシーンだけは、川で泳いだ経験がないので、苦労したようだった。
(リーさん)撮影時は、大変だったが、今は感動している。元々、芝居経験もなく、孫と自分の2人ぐらしの生活を支える日々だった。そのため、この話が来た時には、生活の足しになるならと出ることにした。孫のためと考えたので、苦労はいとわなかった。

:おばあちゃんと孫の役作り・関係性づくりについて
A(監督):リーさんを取材して書き上げたので、彼女は役作りの必要はなかった。
ジョン君は、主人公と異なり、活発な少年だったので、演技をし過ぎる場面が多く、押さえるように指導した。また、撮影中の空き時間は、ジョン君はリーさんと一緒にいるように指示していた。リーさんは、お孫さんが小さかったことを思い出して、たびたび、カットがかかっても涙されることがあり、中断することになった。
A(リーさん):この映画は本当は出たくなかった。なぜなら、孫の世話をしないといけなかったから。また、クランクイン前に孫がけがで入院した時があり、その時は病院にかけつけたが、孫はおばあちゃんが来ると泣いてしまうので、来なくていいよと言ってくれていた。

:劇中の食生活について、タロイモ等が主食で、自給自足の様子が描かれ、肉や麺へのジョン君の興味が描かれているが、実際はどうか?
A(監督):今では、かなり中国の食文化が入ってきているが、リーさんはまだタロイモを栽培している。蘭嶼(らんしょ)でも、米や麺を家庭で食べるようになり、麺を出すお店もできている。ただ、ジョン君も、お盆の時に祖母の家に行った時には、伝統の食文化を食べている。

日本も抱える都市化の弊害

急速に近代化した台湾・高雄市と離島・蘭嶼(らんしょ)の間に生まれた社会問題を描く本作品。日本でも、いたるところで同様の問題が起きている。経済発展に伴い、都市圏と地方の経済格差は広がるが、他方で失われていく伝統芸能などの郷土文化。ひとつの物差しでは、測ることができない事柄だが、あるべき姿はどこにあるのか。そんな現代社会への問題提起がなされいる。

郷土のない世代の誕生

この作品では描かれていないが、映画祭が開催されている東京・首都圏では、近代化に伴い上京した世代ではなく、首都圏で生まれた第2世代が多くなってきた。この世代にとっての郷土は、「東京」であるが、ゆえに、地方の持つ「自然」「食文化」「民俗」など多くのことを知ることができない。ネットワークが発達し、地方でも最新の情報を得られる環境が整ってきた今、新しい流れが生まれるのだろうか。10年後の映画は、何を描いているのか。

『海だけが知っている』東京国際映画祭作品紹介ページ
https://2018.tiff-jp.net/ja/lineup/film/31ASF04

『海だけが知っている』Long Time No Sea(IMDB)
https://www.imdb.com/title/tt7475882/

特集 第31回 東京国際映画祭 31st Tokyo International Film Festival
https://www.lifewithmovies.com/2018/10/tokyo-international-film-Festival.html

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