『ホワイト・クロウ』The White Crow【感想・レビュー】

2018年10月27日土曜日

映画祭 外国語映画 東京国際映画祭

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『ホワイト・クロウ』The White Crow【感想・レビュー】


第31回 東京国際映画祭 コンペティション部門 最優秀芸術貢献賞受賞

スタッフ

監督:レイフ・ファインズ Ralph Fiennes

キャスト

オレグ・イヴェンコ Oleg Ivenko:Rudolf Nureyev
アデル・エグザルホプロス Adele Exarchopoulos:Clara Saint
ラファエル・ペルソナ Raphael Personnaz:Pierre Lacotte

あらすじ

共産主義下にある50年代のソ連。のちに世界中を熱狂させるダンサーとなるルドルフ・ヌレエフは貧しい家庭に生まれ、バレエ・アカデミーへの入学も平均より遅かった。
しかし並外れた身体能力と、強い意志によって急速に頭角を現していく。その激しい性格はアカデミーの常識と衝突することを恐れず、信念を通すためなら教員を罵倒することも厭わない。そんな彼にベテラン指導教員のプーシキンは理解を示し、自宅に住まわせ面倒を見る。やがてヌレエフはバレエ団の一員となってパリで公演を行う。初めて見る西側の世界に刺激を受けるヌレエフだったが、その行動はKGBに逐一監視されていた…。(第31回東京国際映画祭公式HPより)

10月27日(土曜)上映後Q&Aより(ネタバレ含みます)

レイフ・ファインズ監督(以下、監督)
聞き手:矢田部吉彦プログラミング・ディレクター「コンペティション」担当

Q(矢田部):3本目の監督作品となるが、全2作もテーマが異なる。今回のテーマは、どのようにして決定したのか。
A(監督):今回はヌレエフの有名な自伝ではない。若いアーティストの、人として自己実現していくスピリットに感動したから。多くの方を怒らせたり、リスクを冒したりしつつも、ダンサーとして自己実現したいとという想いを達成した姿に惹かれた。

以下、観客からの質問
:レイフ・ファインズとしては、監督、出演としているが立ち位置の違いと、もし他にもチャレンジしたい役割があれば。
A(監督):私は監督として、まだまだ勉強中である。次の機会には、監督に専念したい。今回も本来はそうしたかったが、財政的・興行的な理由があり、出ることになった。編集やデザイナーなどそれぞれには特殊が技術が必要で、多くのプロに助けられて、制作しているので、次回は監督オンリーで行きたい。

:主人公はタタール劇場のソリストだが、映画での演技は未経験。どのように演出したのか。登用した理由は?
A:前提として、演技の出来るダンサーが欲しいということで、大規模なオーディションを実施した。最終的には4、5人となったが、彼には最初から注目していた。採用するためには、3点の基準を設けていて、彼はそれらを満たしていた。1 ヌレイフに似ていること。彼はタタール人っぽい顔立ちをしていて、似ていた。2 スクリーンにおける演技力を持っていた。3 ダンスも当然素晴らしかった。今回は3つとも揃ったキャストに恵まれた。そして、一番大きかったことは、彼の演技力が素晴らしかったことだ。

:今までで撮影に行った場所で印象に残っているところは?
:元々、ロシア文化が大変好きだ。今回だと、セントペテルズブルグが素晴らしかった。素晴らしい建物等がある。また、サルビアでも多くのシーンを撮影したが、街として理解力がある。また、有名なロ~通りのシーンも、撮影したタイミングが良く、素晴らしい映像になった。レンブラントの絵のシーンが登場するが、絵の背景と類似点があり、今回のストーリーにマッチしていた。これは、エルミタール美術館での撮影許可も貰ったが、通常なら撮影許可が得られないところ、他の映画でやる「背景」として使用ではなく、「作品」の意味として使用したい旨を説明し、許可を貰った。また、ルーブル美術館も協力を貰い、休館日に撮影をしたが、撮影をした絵の近くにモナ・リザが飾ってあり、印象的だった。

Q(矢田部):監督は、ロシア語が上手なのは、なぜ?
:そんなにうまくないよ(笑)今回も多く練習をしたし、スタッフにも助けてもらった。そして、ポスプロでかなり修正したよ(笑)

Q(矢田部):次回作の予定はあるか?
:今のところ、予定はない。来年は、俳優としての出演予定が数本ある。

ダンサーか役者か

この作品の主人公役は、ソリストが抜擢され、演技している形だが、近年では『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』では、女優であるマーゴット・ロビーがスケートの練習を重ね、トーニャ・ハーディングを演じている。どちらが優れた手法かというわけではないが、作品にその影響が出るのは確かで、この作品では、ソロでダンスを演じるシーンが贅沢に使用されているし、後者では、マーゴット・ロビーの鬼気迫る演技が楽しめる。

ダンスへの渇望

作品中、恋愛的な要素も含まれているが、ハリウッド映画のような、お決まりのシーンとして入っていない。それよりも、主人公のダンスへの渇望、自己顕示欲といえばそうだが、どうすれば、自分の体を使って物語を伝えることができるのか、ストイックに追及する姿が観客を引き込んでいく。主人公がソリストということもあり、その姿には、リアリティがあり、そして、美しい。

作品全体として

日本では、ダンスのレッスンを受ける人は世界一だが、興行として、ダンスを観られる機会もほとんどない。残念な文化レベルであるが、この作品で描かれるダンサーの世界は、一瞬でも、そんなことを忘れさせてくれるだろう。

『ホワイト・クロウ』東京国際映画祭作品紹介ページ
https://2018.tiff-jp.net/ja/lineup/film/31CMP16

『ホワイト・クロウ』公式サイト
http://white-crow.jp/

『ホワイト・クロウ』The White Crow(IMDB)
https://www.imdb.com/title/tt5460858/

特集 第31回 東京国際映画祭 31st Tokyo International Film Festival
https://www.lifewithmovies.com/2018/10/tokyo-international-film-Festival.html

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