世界の映画祭が絶賛!映画『ソウルに帰る』カンボジア系フランス人監督ダヴィ・シュー監督の世界。韓国で⽣まれ、フランスで養⼦縁組されたフレディは、何をみるか。

2023年8月15日火曜日

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『ソウルに帰る』メイン画像
(C)AURORA FILMS/VANDERTASTIC/FRAKAS PRODUCTIONS/2022
この作品は、第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に選出されたのち、その年(2022年)のボストン映画批評家協会賞では、多くの傑作がエントリーされる中で、作品賞を受賞している(ちなみに、同年の監督賞がトッド・フィールド(『TAR/ター』)、脚本賞がマーティン・マクドナー(『イニシェリン島の精霊』)だと書けば、その世界的評価の高さをご理解いただけるだろうか。そして、前年の2021年の作品賞受賞は濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』です)
『ソウルに帰る』場面写真その1
(C)AURORA FILMS/VANDERTASTIC/FRAKAS PRODUCTIONS/2022
韓国では、朝鮮戦争後、戦後の復興期に、戦争で両親を亡くした子供、親がいたとしても貧困により子供が育てられない家庭が多く、海外に養子縁組に出される子供たちがたくさん存在しました。それは、1980年代まで続くことになります。

この作品は、カンボジア系フランス人の新鋭ダヴィ・シュー監督が、フランスへ養子に出され、20歳を過ぎてから母国・韓国へ戻った友人のエピソードを聞き、自分自身もフランスで生まれながら、25歳で初めて、両親の母国カンボジアに行った経験を重ねあわせる形で生み出されました。

『ソウルに帰る』場面写真その2
(C)AURORA FILMS/VANDERTASTIC/FRAKAS PRODUCTIONS/2022
(あらすじ)韓国で生まれフランスで養子縁組されて育った25歳のフレディは、ふとしたきっかけで、母国である韓国に初めて戻ってくる。しかし、自由奔放なフレディは、韓国の言葉や文化になじめず、誰とも深い関係を築けない。そんな中、フランス語が堪能で親切な韓国人テナの手助けにより、フレディは自分の実の両親について調べ始める。【公式サイトより転載】

アイデンティティを獲得したい主人公の姿と意思

この物語の主人公フレディは、強い意思を持ち、自分自身のアイデンティティを獲得するために、旅をして、他人と関わり、韓国の文化に触れ、時には関係を破壊し、再構築する。

父親やその家族、自分の容姿から「韓国人」のレッテルを貼ろうとする韓国の友人・知人たち。彼らは、まるで「人種」が、「生まれ」が、自分のアイデンティティを構成すべき必然かのように、圧しつけてくる。だが、果たして、そうなのか。

彼女は、鋭い視線、確固たる意思を持って、それらに対抗する。

移民問題の先の未来、世界が混じりあった先には

第2次世界大戦における占領政策、世界各地で今なお繰り返される戦争や紛争、その影響を受けて移民・難民となる人々、社会が近代化する中でグローバリゼーションの広がり。

もはや、どこで生まれたのか、自分のルーツがどこの国なのか、〇〇系〇〇人などという言葉すら陳腐化する時代が到来しつつある

そんな時、人は、何を持って、自分のアイデンティティを構成していくのか

フレディの姿には、この答えのひとつが体現されているように感じる。

『ソウルに帰る』場面写真その3
(C)AURORA FILMS/VANDERTASTIC/FRAKAS PRODUCTIONS/2022

家族の愛、養子縁組の残照

フレディは、養子縁組支援組織「ハモンド」を通して、両親と連絡を取ろうとする。自分の両親は、なぜ、養子に出したのか。彼らは、自分のことをどのように考えているのか。愛しているのか。それは、愛と呼べるのか。自分は、それを求めているのか

「韓国人」としてのアイデンティティを圧しつけようとする一方で、酒に溺れながらも、娘を忘れたことはないと、ウザがられるほどに娘とコミュニケーションを取ろうとする父の姿。

養子に出された過去から来る心の傷が、家族からの愛で癒されるのか。

私は、それを求めているのか。

『ソウルに帰る』ポスター画像

作品情報
監督・脚本:ダヴィ・シュー(Davy CHOU)

撮影:トーマス・ファヴェル
編集:ドゥニア・シチョフ
出演パク・ジミン、オ・グァンロク、キム・ソニョン、グカ・ハン、ヨアン・ジマー、ルイ=ド・ドゥ・ランクザン
2022年/フランス、ドイツ、ベルギー、カンボジア、カタール/119分
公式サイト:https://enidfilms.jp/returntoseoul

(Life with movies 編集部:藤井幹也

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