『あなたの名前を呼べたなら』Sir【感想・レビュー】

2019年8月17日土曜日

review

t f B! P L

(C)2017 Inkpot Films Private Limited,India

スタッフ staff

監督・脚本:ロヘナ・ゲラ Rohena Gera

出演 Cast

ティロタマ・ショーム Tillotama Shome:ラトナ Ratna
ビベーク・ゴーンバル Vivek Gomber:アシュヴィン Ashwin

あらすじ

経済発展著しいインドのムンバイ。農村出身のメイド、ラトナの夢はファッションデザイナーだ。夫を亡くした彼女が住み込みで働くのは、建設会社の御曹司アシュヴィンの新婚家庭……のはずだったが、結婚直前に婚約者の浮気が発覚し破談に。広すぎる高級マンションで暮らす傷心のアシュヴィンを気遣いながら、ラトナは身の回りの世話をしていた。ある日、彼女がアシュヴィンにあるお願いをしたことから、ふたりの距離が縮まっていくが…。(公式HPより)

交わる心

メイドと「ご主人様」、未亡人と夫ではない男性、というインドでは社会的に超えられない関係性の2人が、ただ生活を共有する中で少しずつ心が近づいていく様が繊細に描かれている。ヒロインはメイドという立場から、積極的には多くを語らない(アシュヴィンを思いやって、身の上を語ること自体が、インドでは珍しいことか)が、シーンの中での細かな視線やしぐさがお互いの気持ちを伝えている。

社会問題を現代的に描く

インド社会に残る「階級」や「未亡人」に関する社会問題を、米国への留学経験のあるロヘナ・ゲラ監督がグローバルな視点から表現している。ヒロインを「被害者」としては描きたくないとインタビューで監督は答えているが、まさに未来志向で葛藤する現代女性の姿として、涼やかに描かれている。
一方で、未亡人が装飾品をつけること、派手な色の衣装を着ることを禁じていること、再婚を禁じていることは、ストレートに物語に取り込みつつ、ファッションデザイナーを目指すというヒロインの夢を通して、対比的に描いてもいる。

象徴的な食事のシーン

この物語の中で、何度も登場する食事のシーン。「階級」の格差を表現しつつ、食事の準備をするヒロインと食事をする「ご主人様」のすれ違いを表現する場面として、象徴的に描かれてる。食事を通じて、毎日繰り返される2人の会話や視線が少しずつ変化していく様子が切なく、たとえ、会話がなくても、その態度で心が伝わってくる。

作品全体として

色濃く残るインドの社会問題を取り上げながら、ただ、ヒロインの自立していく切ない恋愛物語として、鑑賞後爽快な心にしてくれる監督の演出が素晴らしい。また、ラストシーンは予定調和ではあるが、観客の期待したものを切れ味よく見せてくれていて、とても気分が良い。この作品が長編デビューのロヘナ・ゲラ監督、この後も期待して、追いかけていきたい。おススメ作品。

『あなたの名前を呼べたなら』公式サイト
http://anatanonamae-movie.com/

『あなたの名前を呼べたなら』Sir IMDB
https://www.imdb.com/title/tt7142506/

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