『黒い箱のアリス』Black Hollow Cage【感想・レビュー】

2018年2月12日月曜日

review

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スタッフ staff

監督・脚本:サドラック・ゴンザレス=ペレジョン Sadrac Gonzalez-Perellon

出演 Cast

ロウェナ・マクドネル Lowena McDonell:アリス
ジュリアン・ニコルソン Julian Nicholson:アダム
エデ・リサンデル Haydee Lysander:エリカ
マーク・ピゲネル Marc Puiggener:ポール

あらすじ

父親が起こしてしまった事故で、母親の命と自らも右腕を失ってしまった少女アリス。人間の言葉を話せる装置をつけた愛犬をママと呼び、周囲に心を閉ざした彼女は、ある日森で巨大な黒い立方体を発見する。その中でアリスが見つけたのは不思議なことに彼女自身の筆跡で「彼らを信じないで!」と書かれた一通の手紙。ほどなくして、父親が森で倒れていたという姉弟を連れ帰ってくる。「彼ら」とはこの二人のことなのか?手紙は一体誰が書いたのか?黒い箱の正体は?やがて訪れる恐怖と惨劇。その先でアリスを待ち受ける運命とは?(公式HPより)

タイムパラドックスとガラス張りの謎の家を楽しみましょう

本作品は、スペイン製作のSF作品である。余計なBGMや説明はなく、静かな森の中にあるガラス張りの建物の中で、近未来の世界が進行していく。近未来と言っても、光る剣や宇宙線が出てくるわけではない。少女の使う義手、疑似音声でコミュニケーションを取る犬、黒い箱。それだけで近未来を表現しているのだから、SFファンなら理解できるでしょと言わんばかりである。

説明が無いので、少し考えてみる。

「アリスの義手」この義手は、使用者の「意思」を感じ取って動くもの。この「意思」を感じるという点が、ストーリーの鍵となっている。「意思」はごまかすことができない「真実」である。
「疑似音声でコミュニケーションを取る犬」この犬は、事故で亡くなった母親の代わりとして登場するが、作品中でアリス以外に、エリカと会話するシーンがある。現代でも、まるで犬が話しているように作られた遊具があるが、作中のアイテムは相手の「意思」を読み取ることができる。ゆえに会話の中で、話してはいけない言葉は、あえて話さず別の会話に切り返している。
本作品には、複数の時間軸のアリスが登場している。本編が進行するA軸のアリスと彼女を助けようとするB軸のアリス、そして、A軸のアリスが助けようとするC軸のアリス。
これを踏まえて、本編をじっくり観ると、少し謎が解けてくるだろう。

SF作品があまり作られない日本

日本では、漫画文化が発達しているので、SFは多く描かれていると感じるかもしれないが、そうとは言えない。SF雑誌は、老舗のSFマガジンしかなく、ハードSFは、早川文庫と創元SF文庫ぐらいで、あまり凝ったSF作品に触れることができない。
本作品は、そういう意味では、羨ましい作品である。中編SFなどで描かれる世界観を、このような形で映像化することができることは素晴らしく、日本ではお粗末なCGかアイドルを使ったB級で作り手が楽しむ系作品が製作される程度である。

作品全体として

記号的なSF作品は、難解で観客を選ぶかもしれないが、SFの楽しさを感じることができる素敵な作品。セリフが少なく、派手なアクションやセリフ回しがないので、日本の観客は少し準備をして、観た方がいい。日本の制作会社も、こんな作品を製作して欲しいが、興行的には難しいでしょう。日本映画界にはない、懐の深さを感じる作品。おすすめ作品

『黒い箱のアリス』日本配給サイト
http://klockworx.com/movie/m-406133/

『黒い箱のアリス』Black Hollow Cage IMDB
https://www.imdb.com/title/tt5687424/

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