『リトル・ジョー』Little Joe【感想・レビュー】

2020年7月17日金曜日

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(C)COOP99 FILMPRODUKTION GMBH / LITTLE JOE PRODUCTIONS LTD / ESSENTIAL FILMPRODUKTION GMBH / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE 2019

第72回カンヌ国際映画祭主演女優賞

スタッフ staff

監督:ジェシカ・ハウスナー Jessica Hausner
音楽:伊藤貞司

出演 Cast

エミリー・ビーチャム Emily Beecham:アリス・ウッダード Alice Woodard
ベン・ウィショー Ben Whishaw:クリス Chris
ケリー・フォックス Kerry Fox:ベラ Bella
キット・コナー Kit Connor:ジョー・ウッダード Joe Woodard

あらすじ

“バイオ企業で新種の植物開発に取り組む研究者のアリスは、息子のジョーと暮らすシングルマザー。彼女は、見た目が美しいだけでなく、特殊な効果を持つ真紅の花の開発に成功した。その花は、ある一定の条件を守ると、持ち主に幸福をもたらすというのだ。その条件とは、1.必ず、暖かい場所で育てること、2.毎日、かかさず水をあげること、3.何よりも、愛すること。会社の規定を犯し、アリスは息子への贈り物として花を一鉢自宅に持ち帰り、それを“リトル・ジョー”と命名する。花が成長するにつれ、息子が奇妙な行動をとり始める。
アリスの同僚ベラは、愛犬のベロが一晩リトル・ジョーの温室に閉じ込められて以来、様子がおかしいと確信し、原因が花の花粉にあるのではと疑い始める。アリスの助手、クリスもリトル・ジョーの花粉を吸い込み、様子がいつもと違う。何かが少しずつおかしくなっていくその違和感は、果たしてこの植物がもたらしたものなのか…。(公式HPより)”

恐ろしいもの

近年、日本で公開されるホラーと呼ばれる作品は、殺人鬼や幽霊、ゾンビや悪魔といった形で人に害をなす存在が登場し、主人公やその身近な人たちに襲い掛かるようなパターンが多い。それらに対して、この作品は、殺人鬼も幽霊もゾンビも悪魔も登場しない。「花」が登場し、その「花」により心がわりしていく「人」がいるだけだ。しかしながら、この作品は、紛れもなく恐ろしく、観た観客に嫌な手触りを残していく。

信じるということ

この作品に対して、ジェシカ・ハウスナー監督は「私たちの中に奇妙なものが思いがけず生まれ、親しんでいたはずのものが奇異に映る。知っているはずの人が突然別人に思える。-中略-そういった意味で本作は人の中に存在する奇妙なものの比喩と言えるでしょう」と語っている。人の心は「みえない」。『ゼイリブ』や『散歩する侵略者』のように、決して「中身」が入れ替わるわけではなく、昨日まで友人・知人だった人たちの心が、親しめない存在への変容していく。その原因は、宗教、政治、その他の事柄「花粉」かもしれない。あなたのとなりの人が、昨日までと違うことを話し出したとしたら、それはもう「恐怖」でしかないかもしれない。

変わったのは誰か

この物語の主人公は、シングルマザーとして、仕事と子育ての両立がうまくいかず、心に負担を感じている。故に、自分の周りの人、例えば、息子、同僚が変化していく時、自分が病んでいるのか、それとも、周囲がおかしくなっているのか、判断に迷ってします。近年、同調圧力が強くなりつつある日本社会において、もし、周りの人たちが徐々に変わっていき、自分との間に違和感が生じたとき、果たして、自分を信じることができるだろうか。この作品が示すものを、自分の中に置き換えた時、再び恐怖が訪れ、それから逃れることはとても難しい。恐ろしい。

作品全体として

研究室というクリーンな空間に、リトル・ジョーの印象的な「赤」、ポップなデザインの画面というスタイルの底に、「違和感」「不信感」を敷き詰めた感じがとても嫌な感じで、心に残る。まぎれもなく、心を動かされている。最高に綺麗で恐ろしいものを観た。そんな作品。おすすめ。

『リトル・ジョー』公式サイト

『リトル・ジョー』Little Joe(IMDB)


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