『妻の愛、娘の時』相愛相親 Love Education【感想・レビュー】

2018年9月1日土曜日

映画祭 外国語映画

t f B! P L
『妻の愛、娘の時』相愛相親 Love Education【感想・レビュー】
(C)2017 Beijing Hairun Pictures Co.,Ltd.

第12回アジアンフィルムアワード 最優秀主演女優賞(5部門ノミネート)

スタッフ

監督・脚本:シルビア・チャン
撮影:リー・ピンビン

キャスト

シルビア・チャン:ユエ・フイイン
ティエン・チュアンチュアン:イン・シアオピン
ラン・ユェティン:ウェイウェイ
ウー・イエンシュー:ツォン
ソン・ニンフォン:アダー

あらすじ

母の死を看取ったフイインは、母を父と同じ墓に入れるため、田舎にある父の墓を自宅のそばへ移そうとする。夫や娘と共に、父の故郷を久しぶりに訪れるが、父の最初の妻ツォンや、彼女に同情した村人たちに激しく抵抗され、大きな波紋を巻き起こしてゆく。夫の帰郷を一途に待ち続けたツォンは、田舎の家で一人暮らしをしていた。
フイインは、自分の母こそが本妻だと証明するために、両親の結婚証明書を発行しに行くが、都市開発によって役所が移転したと言われ、なかなか手に入れることができない。長年務めた学校教師の職をもうすぐ定年退職することも相まって、思い通りに事が進まずイライラを募らせていく。
そんな妻を優しく見守る夫・シアオピンは、彼女のために定年祝いのメッセージカードを買いに行ったりと陰ながら支えようとするのだが、ひょんなことから、勤め先の自動車教習所の生徒・ワンさんとの仲を、妻に疑われてしまう。
フイインの娘・ウェイウェイはミュージシャンのボーイフレンド、アダーから北京に一緒に行こうと言われ迷っていた。そんな折に、彼女が働いているテレビ局が、フイインとツォンの「お墓をめぐるトラブル」に目をつけ取材をしようとする。ウェイウェイは、ツォンのところへ足しげく通い、昔話を引き出して取材を進めるが、2人は次第に打ち解け、心を通わせていく。
そして遂に、テレビ番組にツォンが出演する日がやって来た。過剰な演出で煽り、見学にきていたフイインもカメラの前に晒され、お互いに感情のままに想いをぶつけあう。
フイイン、ウェイウェイ、ツォン。大切に想う人への気持ちが複雑に交錯するなか、それぞれが最後に下した決断とは……。(公式HPより)

俳優陣の演技力が光る

「家族」を描いた作品といえば、2018年はカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した是枝監督の『万引き家族』が血の繋がらない家族の姿を描いて、話題となったが、本作品は血の繋がる家族を含めた心の繋がり、想いのあり方を描いている。アジアンフィルムアワードを始め、多くの映画賞で評価をされたシルビア・チャンだけなく、その夫役ティエン・チュアンチュアンや都会へ行ったままの夫を待つ先妻を演じるウー・イエンシューは、セリフで多くを語ることはないが、映画の中の時間が流れていくうちに、徐々にわかりあえるということを、空気感をもって、伝えていることが素晴らしい。

三世代を描く作品が増えている

第13回大阪アジアン映画祭で上映された『血観音』もそうだが、近代化とともに平均寿命が延びたことを反映しているのか、三世代の心のありようを描いた作品が増えているようだ。それぞれが生きた時代が異なり、加速度的に変化する現代へ適用しつつも、心に流れる時代感の差が、作家にとっても、観客にとっても、テーマとなっているということだろう。

近代化した中国の今

本編中で、シルビア・チャンが役所とやりとりをするシーンは、縦割りで協調できていないという社会を役所の姿を使って、観客にみせているが、それが、自分達も同様であり、自分達を打映す鏡であるという演出は、自分たちを見つめなおすきっかけとなる。寝室でスマートフォンに向かう家族の姿は、現代のコミュニケーションの取り方を皮肉をもって表現している。

作品全体として

カンヌ国際映画祭等世界3大映画祭で上映された作品は、今年は特に多いと感じるが、徐々に日本国内でも公開されるようになった。これは、キノフィルムの尽力によるところが多く、とても素晴らしいことだ。次は、一時期の香港映画ブームのように、アジア映画の良作も日本国内で放映される本数が増えると、より観客は良作に触れることができるし、また、それにより、日本映画のクリエイティブも向上するように思う。

『妻の愛、娘の時』公式サイト
http://www.magichour.co.jp/souai/

サイト運営

自分の写真
映画情報「Life with movies」編集部公式サイト。最新映画や映画祭、舞台挨拶のほか、編集部による過去映画トピックスをお届けします。 twitterアカウント:@with_movies

QooQ