第36回東京国際映画祭<見どころ紹介>コンペティション編。注目は、イラン映画と中国映画ですが、はたして、東京グランプリは、どの作品が取るのか。

2023年10月22日日曜日

映画祭 東京国際映画祭

t f B! P L
第35回東京国際映画祭の様子
昨年(2022年)の第35回東京国際映画祭の様子 撮影:「Lifewithmovies」編集部

 2023年10月23日(月)から11月1日(水)まで、日本国内で唯一の国際映画製作者連盟公認の映画祭「第36回東京国際映画祭」が始まります。

この映画祭は、日本映画界にとって、もっとも需要で、注目される映画祭であり、最大の映画祭でもありますので、「Lifewithmovies」編集部も、毎年、取材させていただいていると同時に、もっとも楽しみにしている映画祭です。

今回から、数回に分けて、編集部の注目する作品を、独断と偏見により、紹介していきます。

東京国際映画祭とは 
第36回を迎える東京国際映画祭(以下 TIFF)は、日本で唯一の国際映画製作者連盟※公認の国際映画祭です。1985年、日本ではじめて大規模な映画の祭典として誕生し、アジア最大級の国際映画祭として、東京(日比谷・銀座・有楽町)を舞台に、世界中から優れた映画が集まり、国内外の映画人、映画ファンが新たな才能とその感動に出会い、交流する場である。※国際映画製作者連盟https://fiapf.org/):世界の映画産業、国際映画祭の諸問題を改善し、検討する国際機関。パリに本部を置き、世界29か国・37の映画製作者団体(2023年10月現在)が加盟している。

コンペティション部門(長編)からご紹介

世界中で「映画祭」の冠をつけたイベントが多数開催されていますが、国際映画製作者連盟が「Competitive Feature Film Festivals」に認定している映画祭は、14の映画祭だけです。世界3大映画祭と呼ばれる、カンヌ国際映画祭、ヴェネチア国際映画祭、ベルリン国際映画祭に加え、ロカルノ映画祭、サン・セバスチャン国際映画祭などに並んで、東京国際映画祭も認定されています。ちなみに、映画祭の規模が大きくても、トロント国際映画祭や釜山国際映画祭は、連盟が認定した長編コンペを持つ映画祭ではありません。

そういう意味でも、この映画祭における「コンペティション部門」は、最重要な部門であると同時に、とても注目して観ています。

編集部が注目しているコンペ作品

『タタミ』

『タタミ』場面写真その1
(C)Juda Khatia Psuturi

映画大国として知られているイラン。『熊は、いない』が公開中のジャファル・パナヒ監督『別離』『英雄の証明』アスガー・ファルハディ監督など、多くの名匠を輩出し続けています。

今回は、そんなイランにルーツを持ち、『聖地には蜘蛛が巣を張る』で、第75回 カンヌ国際映画祭(2022年)女優賞を受賞した、イラン出身、イラン系フランス人、ザーラ・アミール・エブラヒミが、イスラエルの『SKIN スキン』で知られる、ガイ・ナティーブ監督と共同監督を務めた作品が選出されました。ザーラ・アミール・エブラヒミは、コーチのマルヤム役で出演もしています。

『タタミ』場面写真その2
(C)Juda Khatia Psuturi

この作品は、イラン代表の女子柔道選手レイラが、国際大会でイスラエルの選手と対戦するかもしれないとわかった時、国から棄権するように命令されることから起きる出来事を描く。女性差別が厳しいイランにおいて、女性アスリートの国際大会という、政治とは切り離されるべき事柄の中で、主人公である女子柔道選手レイラと、自分も選手時代に同じ命令を受け、棄権を経験したことのあるコーチ・マルヤムが、どのような葛藤と選択をするのか。

『タタミ』

監督:ザーラ・アミール・エブラヒミ、ガイ・ナティーブ
キャスト:アリエンヌ・マンディ、ザーラ・アミール・エブラヒミ、ジェイミー・レイ・ニューマン
103分/2023年/ジョージア/アメリカ

『タタミ』Tatami 東京国際映画祭作品紹介ページ
https://2023.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3601CMP14

『ロクサナ』

『ロクサナ』場面写真その1

イラン関連の映画をもう1本。デビュー作『南から来た少年』で、東京国際映画祭ヤングシネマ・コンペティション東京ゴールド賞ほか多くの映画祭で注目を集め、最近では、『Malaria』が、2016年のヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門に選出されている、パルヴィズ・シャーバズィ監督の最新作。ワールドプレミアです。

主演フレード役は、昨年の東京国際映画祭で第三次世界大戦が上映されたホウマン・セイエディ監督の作品『Sizdah』に出演していたヤスナ・ミルターマスブが演じ、共演のロクサナ役マーサ・アクバルアバディは、長編映画初出演。

『ロクサナ』場面写真その2

結婚式のビデオ撮影を仕事にするロクサナと、とある出来事から彼女を手伝うことになるフレード。イランの若者たちの不安定な状況を描いた作品らしい。

『ロクサナ』

監督:パルヴィズ・シャーバズィ
キャストヤスナ・ミルターマスブ、マーサ・アクバルアバディ、マエデー・ターマスビ119分/2023年/イラン

『ロクサナ』Roxana 東京国際映画祭作品紹介ページ
https://2023.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3601CMP11

『西湖畔に生きる』

『西湖畔に生きる』場面写真その1
(C)Hangzhou Enlightenment Films Co., Ltd.

今年の映画祭のもう一つの注目は、中国映画。興行収入でも、ついに北米を抜いて世界一となった中国。エンターテイメントな作品以外でも、上質な作品を生み出す若手の映画監督が台頭してきています。そんな中国映画界の勢いそのままに、東京国際では、3本がコンペティションに選出されています。

その中でも、注目の1本が『西湖畔に生きる』です。

『西湖畔に生きる』場面写真その2
(C)Hangzhou Enlightenment Films Co., Ltd.

この作品を監督したのが、グー・シャオガン監督。前作『春江水暖』(しゅんこうすいだん)が、長編デビュー作なのですが、いきなり、2019年・第72回カンヌ国際映画祭批評家週間のクロージング作品に選出された超注目の新鋭監督です。同作品は、東京フィルメックスのコンペティション作品として、日本で初めて紹介されたのち、日本配給もされています。

その、グー・シャオガン監督の2作目が、今回、コンペに選出された『西湖畔に生きる』。舞台は、中国・杭州の緑茶の名産地と知られる西湖のほとり。父親が失踪したあと、2人で生活する母・タイホアとその息子ムーリェン。母は、茶畑で働いている。そんな母に再婚の話が持ち上がり、という母と子の物語。前作同様に、監督の映像美にも、注目をしたい作品。

『西湖畔に生きる』

監督:グー・シャオガン
キャスト:ウー・レイ、ジャン・チンチン
115分/2023年/中国

『西湖畔に生きる』Dwelling by the West Lake 東京国際映画祭作品紹介ページ
https://2023.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3601CMP04

まだまだあります、コンペティション作品

2023年の東京国際映画祭のコンペティション作品は、15本。10本がワールド・プレミア(世界初公開)、1本がインターナショナル・プレミア(製作国以外で初公開)、4本がアジアン・プレミア。いずれも、日本では初上映なので、映画祭に参加して観ることで、映画関係者やメディアだけでなく、皆さんも「日本で初めて観る」観客のひとりとなることができます。

ただ、1点だけ、編集部が残念に思っていることがあります。それは、現在の市山尚三さんがプログラミング・ディレクターに就任された時に、コンペティションの条件として「ワールド・プレミア」であること、という条件を外したこと。確かに、素晴らしい映画を選び、上映したい、という意味では理解できるのですが、一方で、他の13の映画祭と同様に、東京国際映画祭も「Competitive Feature Film Festivals」として開催されていて、この映画祭を目標に、作品を応募してくれる世界の製作者がいるなかで、他の映画祭の次でもいい、という形で「映画祭の格」を落とすような対応は、この映画祭を目指してくれる人たち対してどうなのか。また、編集部はこの映画祭が「日本を代表する映画祭」だと思っているので、自分達でいままで積み上げたブランドを落とすのは、どうなのか、と考えています。昨年の映画祭のQ&Aでもありましたが、参加された監督が「東京がワールド・プレミアなんだよ」と笑顔で話される姿をみるたびに、心が痛くなります。なので、できれば、元のレギュレーションに戻して欲しい。映画祭の運営の苦労も、世界の映画祭業界のことを理解しないものが何をいうのか、という批判があるとは思いますが、日本の映画ファンのひとりとして、そう願っています。

そんな映画ファンや、映画監督、俳優など映画関係者が集まる第36回東京国際映画祭は、10月23日(月)~11月1日(水)の10日間、開催されます。いままでに参加されたことのない方も、一度、気軽に足を運んでみて欲しいです。いままでにない体験が待っているかもしれないので。

編集部は、毎日、会場にいますので、ぜひ、同じ空気、同じ空間で映画を楽しみましょう。現地の様子は、毎日、X(旧twitter)のアカウントhttps://twitter.com/with_moviesからお届けしますので、参考にしてください。

第36回東京国際映画祭
会期:2023年10月23日~11月1日
公式サイト:
https://2023.tiff-jp.net/

東京国際映画祭ポスター画像




サイト運営

自分の写真
映画情報「Life with movies」編集部公式サイト。最新映画や映画祭、舞台挨拶のほか、編集部による過去映画トピックスをお届けします。 twitterアカウント:@with_movies

QooQ