Life with movies 『アマチュアズ』Amateurs【感想・レビュー】
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『アマチュアズ』Amateurs【感想・レビュー】

『アマチュアズ』Amateurs【感想・レビュー】


第41回ヨーテボリ国際映画祭 最優秀ノルディック映画賞

スタッフ

監督・脚本:ガブリエラ・ビッシュレル Gabriela Pichler

キャスト

Zahraa Aldoujaili:Aida
Yara Aliadotter:Dana
Fredrik Dahl:Musse
Shada Ismaeel:Aidas moster
Maria Nohra:Noor
Susanne Hedman:Lararen Kerstin

あらすじ

すっかり過疎化してしまったスウェーデン西部の小さな町。町議会は経済活性化のためにドイツ資本の大型スーパーの誘致を決定し、PR動画制作を地元の高校に依頼する。スマホ片手に町を撮り始めたダナとアイダだが、カメラを通じて見える現状がふたりに変化をもたらしていく…。(トーキョーノーザンライツフェスティバル公式HPより)

2019年2月9日(土曜)上映後Q&Aより(ネタバレ含みます)

ガブリエラ・ビッシュレル監督(以下、監督)
ヨハン・ルンドボルグ撮影監督(以下、撮影)
聞き手:トーキョーノーザンライツフェスティバル実行委員会

Q(実行委員会):この作品では、グローバリゼーション、表現の問題、移民を含めた格差の問題など多くのテーマを包含しているが、テーマにたどり着いた経過は?

A(監督):現代社会は、スウェーデンも日本も複雑になって来ているが、そんな中で、現在のスウェーデンを描きたいと考えた。自身もスウェーデンの田舎出身で、両親も移民。同世代の中で、進学する方が珍しい状況で、家族の中で進学したのは自分だけ。そんな自分の生い立ちも作品には反映している。この作品は、2人の若者がカメラを手にすることで、政治的な意識を持ち、彼らが社会に入っていくとどうなるのか、という点は描きたいと考えていた。
A(撮影):彼らが撮影するのは、コミューンフィルム(地域PR動画)だが、スウェーデンでは多くの地域で製作されている。しかし、PR動画は「売れる部分」のみを盛り込んでいくもの。そういった点からインスピレーションを得た。

Q(実行委員会):キャスティングを決めた経過は?
A(監督):脚本を書いている時からも、キャストを探すこともある。さらには、キャラクタを生み出す前にも、インスピレーションを得ることもある。この作品では、ロケ地を探しに行った際に、案内役の方の売り込み方が印象的で、案内役に魅せられたことが契機となった。そのため、その案内役の方とその母親は、作中に登場してもらった。案内役の彼は、普段使う言葉は母親が理解できず、また、母親が使ってきた言葉を自身がすべては理解できない。社会に適合していかないといけないが、一方で自分達のアイデンティティが失われていく。そんな世代として登場してもらった。主人公の2人は、さらにそのあとの新しい世代。

Q(実行委員会):撮影した街で噴水や学校などロケーションを選んだ理由は?
A(撮影):カフェや橋は周辺で撮影したし、ロケ地(スウェイン?)が脚本に合わない時は、脚本を改稿した。皮工場は、地元にあった場所を使用した。ロケ地を取り入れることで作品を発展させていくことができた。また、コミューンフィルムの制作の中では、みせたい部分とそうではない部分に分けているが、この作品はそのアンチテーゼを出そうとした部分もある。

Q(実行委員会):作中の泡のシーンが印象的だったが。
A(監督):田舎街なので、洗剤を撒いて遊んでいたようだ。
(撮影監督):あとで排水溝が大変なことになっていたね。

Q(観客から):スウェーデンでの観客や周辺のリアクションは?
A(監督):好意的に受け止めてくれた。咳止めのキャンディーのような作品として。見た目は軽いが、内容には重要な部分を含んでいる。
(撮影監督)スウェーデンの映画界に求められていたから、好意的に受け止められたのではないか。10年前は画一的な作品ばかりが製作されていたが、この作品のように観客側が考えさせられるような作品を求めていた。

Q(観客から):ヨーロッパでは、作品に俳優以外を登用することが増え、この作品では年配の方も登場しているが、自然だった。アプローチのコツのようなものがあるのか。
A(監督):プロではないので、彼らが安心できるように心がけた。もっとかっこいい人、演技が上手い人がいると彼らは言うが、そんな彼らを納得させる必要があった。また、地元の方をキャスティングしたのは、体幹が違うから。実際に仕事をしている方は、体のつくりも違う。
(撮影監督):プロではないので、カット割りを少なめに心がけた。
(監督):演じることは初めてだが、彼らの仕事に関してはプロフェッショナル。その中で得る部分もあり、映画の中に取り込むことも出来た。

グローバリゼーションの広がりから

スウェーデンは移民な寛容な政策をとっているため、多くの国からの流入してきた多様な人々で社会が構成されている。そこには、多様なアイデンティティがあり、作品中で象徴的な部分のひとつとして「言葉」がある。登場人物が話す言葉として「スウェーデン語」「英語」「アラビア語」「タミル語」「クルド語」「ボスニア語」「ドイツ語」等があり、スウェーデンで教育を受けた年齢ではない年配層との会話では、若者を仲介しないと、会話が成立しない場面がある。さりとて、「英語」「スウェーデン語」に会話を統一すればよいというものではない。文化の多様性もまた、受け入れられるべきであるのだから。そんな現代のスウェーデンが、この作品では描かれている。

格差社会の問題

近年のスウェーデンの内包する課題として、移民を含む社会格差がある。この物語の中の主人公2人の間にも顕在化してしまう。置かれた経済的状況の違いによる軋轢が、人々が交流する中で生じる様が、議会側の動画撮影に関わる人々、主人公の家族同士の交流の中で、浮彫になっていく。これは、グローバリゼーションが進む中で、起きやすい問題であり、普遍的なテーマであろう。

表現の問題

この作品の軸として、コミューンフィルム(地域PR動画)がある。日本でも、地域創生が叫ばれる中、自治体が競ってPR動画を製作しているが、スウェーデンでも同様に制作されている。しかし、そこに描かれているものは、都合の良い地域の部分だけで、真実ではない。それに対し、主人公達が撮影していくのは、人であり、社会であり、本当の地域であり、経済格差やグローバリゼーションの問題も含め、むき出しで表現されていく。フェイクニュースが話題となる現代において、物事の伝え方をどのように考えたらよいのか、そんなテーマもこの作品には含まれている。

作品全体として

スウェーデンの作品に限らず、近年のヨーロッパ地域の映画には、移民問題が描かれることが多くなってきた。それだけ社会への影響が大きく、課題となっているからだろう。日本は移民に厳しい政策の国であり、今後、グローバリゼーションを進めていくと、遅ればせながら、直面するであろう部分が、先進国であるスウェーデンの映画から学ぶことができる。映画は、娯楽であり、芸術であるが、その娯楽を通して多くのことを学ぶことができる。それは、とても素晴らしいことだろう。そして、そんな気持ちにしてくれるこの作品は、素晴らしい。

『アマチュアズ』Amateurs IMDB
https://www.imdb.com/title/tt7893992/

トーキョー ノーザンライツフェスティバル2019 公式サイト
http://tnlf.jp/

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