『ベロニカとの記憶』【感想・レビュー】

2018年1月21日日曜日

外国語映画

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『ベロニカとの記憶』

(C)2016 UPSTREAM DISTRIBUTION, LLC

スタッフ

監督:リテーシュ・バトラ
脚本:ニック・ペイン

キャスト

ジム・ブロードベント:トニー・ウェブスター
シャーロット・ランプリング:ベロニカ・フォード
ミシェル・ドッカリー:スージー・ウェブスター
ハリエット・ウォルター:マーガレット・ウェブスター
エミリー・モーティマー:セーラ・フォード
フレイア・メーバー:(若き日のベロニカ)

あらすじ

引退生活を送るトニーの元にある日、見知らぬ弁護士から手紙が届く。あなたに日記を遺した女性がいると。その女性とは、40年も前の初恋の人ベロニカの母親だった。遺品の日記は、トニーの学生時代の親友のものだった。なぜベロニカの母親の元にその日記があったのか?そこには一体何が書かれているのか?
長い間忘れていた青春時代の記憶、若くして自殺した親友、初恋の秘密--。ベロニカとの再会を果たすことにより、トニーの記憶は大きく揺らぎ始める……。過去の謎が明らかになった時、トニーは人生の真実を知ることになる。(公式HPより)

精緻に構成されたストーリー

この作品は、老いた主人公トニーが、あるきっかけから自分の過去をたどる物語となっているが、前半の複線は意識して観ないと気づかないぐらいひっそりと隠されている。この作品の原作は、ジュリアン・バーンズ著の「終わりの感覚」という小説だが、この作品の語り手はトニー自身で、前半の語りは「~と記憶している」「~というようなことを書いた」という形で、あいまいな表現を繰り返している。つまり、この作品の視点は「トニー」であり、事実かどうかはわからない、という点を意識する必要がある。そういう意味では、『ユージュアル・サスペクツ』が想起される。

ラストの違い

本作と原作とでは、ラストシーンが異なる。この作品を観てから、原作と比べていただければ良いが、映画として成立されるために、ラストシーンを修正されたようだが、鑑賞後の感覚としては、成功していると思われる。

ストーリーと映像の誤差

この作品の鍵は、「トニー」の主観であり、「記憶」である。筆者は、字幕を追う形で本作を理解しているので、英語を理解して作品を観ると異なる感想になるかもしれないが、小説のつくりと同様に、もう少し視点を「私」に近づける工夫ができたのではないかと考えてしまう。小説の視点が、主観と客観と分かれるように、本作は「主観」であることが重要なので、一般的な映画作品よりもその部分を意識した方が、より観客は理解しやすいように思える。そのあたりが、『ユージュアル・サスペクツ』が優れていた点であり、映像とセリフの角度を変えてもよかったように感じる。

作品全体として

小説がブッカー賞を受賞した傑作なので、映画単体の評価は難しいが、最後まで観たあと、もう一度観なくなる作品ではある。人の記憶がいかに都合よく出来ているのか、というのは、筆者も身につまされるものがあるが、おそらく、観客の多くもそう感じるであろう。そんな感覚にさせるのであれば、映画としては、大成功であろう。

『ベロニカとの記憶』公式サイト
http://longride.jp/veronica/

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