『わたしの叔父さん』Uncle【感想・レビュー】

2019年11月1日金曜日

review 映画祭 東京国際映画祭

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第32回 東京国際映画祭 コンペティション部門 東京グランプリ

スタッフ staff

監督・脚本・撮影・編集:フラレ・ピーダセン:Frelle Petersen

出演 Cast

イェデ・スナゴー Jette Sondergaard:クリス Kris
ペーダ・ハンセン・テューセン Peter Hansen Tygesen:叔父さん Uncle
オーレ・キャスパセン Ole Caspersen:Johannes
Tue Frisk Petersen:Mike

あらすじ

クリスは体が不自由な叔父と暮らしながら、ふたりで牛舎の世話をしている。愛情ある絆を日々の作業のなかで築き、言葉がなくても通じあえている。クリスが主要な労働をこなし、叔父に対しては過保護とも言うべき母性あふれる態度で接している。難産の末に生まれた子牛を救ったクリスは、獣医になる夢を再び抱き始める。(第32回東京国際映画祭公式プログラムより)

10月30日(水曜)上映後Q&Aより

フラレ・ピーダセン監督(以下、監督)
イェデ・スナゴー(主演)
マーコ・ロランセン(プロデューサー)
聞き手:矢田部吉彦プログラミング・ディレクター「コンペティション」担当

Q(矢田部):叔父と姪の物語の着想したいきさつを教えて下さい。
A(監督):私たちは、ユトランド半島の南部の農業地帯の出身です。その地域を舞台に作品を製作したいと考えていました。私は、映画を作りたくて都会に出たのですが、田舎に残りたいという若者もいます。そのあたりから着想を得ました。主人公は、叔父さんの面倒を看るのか、それとも大学へ行くのかの2択を迫られる物語になりました。私の第1作に、イェデさんに出演していただいていて、もう1作品一緒に作りたいと考えていました。

Q(矢田部):イェデさんの本当の叔父さんが出演されていますが、出演に至るいきさつを教えて下さい。
A(イェデ・スナゴー):確かに出演しているのは、私の叔父で、舞台となっているのは、叔父の農場です。農場の生活をリサーチするために、叔父を取材したのですが、監督が彼に恋をしてしまうぐらい気に入って、スクリーンテストをしてみたら、素晴らしかったので、そのままキャスティングされることになりました。叔父との共演は、最初は変な感じでした。慣れなくて。毎日、一緒にご飯を食べている中で、以前より親密になることができました。

以下、観客からの質問
:実際に、どこまでが台本にあるシーンだったのでしょうか。寝ている時に咽ぶシーンなども演出だったのでしょうか。
A(監督):普段は、普通に脚本を書きます。今回は、彼女と叔父の関係性がリアルでした。セリフは99%台本ですが、たまに騙して、即興のシーンを作り出したところもあります。レストランの少し黙るシーンがそうです。セリフがなくなって、違和感が出るところは、即興です。ビスケットで咽ぶシーンは、指示を出していますが、タイミングは役者に任せていました。

:エンディングが印象的でした。いつか二人には別れが来ると思いますが、その先のイメージはお持ちでしょうか。
A(監督):最終的には、叔父の元を離れられないという設定でスタートしています。作品を観るたびに考えることもあります。叔父さんは、姪のサポート役にもなっていて、関係性が出来ていますが、物語の作り方によっては、叔父を悪役にすることもできましたが、今回は、そのようにはしていません。

:作品の設定について教えてください。フランス映画『エール』をイメージしましたが、影響はあるのでしょうか。
A(監督):さまざまな名作を観てきました。永年、日本映画も観ています。小津安二郎の作品、例えば、東京3部作も観ています。最小限のセリフで描かれてるところが素晴らしい。他に日本の監督では、やはり是枝監督が家族を描いたものが素晴らしい。しかし、この作品に特にインスピレーションを与えた作品はありません。
私は、2人の間の何も言わなくても、通じている姿を描きたかった。そいういう意味では、彼女の叔父さんにインスピレーションを得ています。叔父さんのお父さんも実は顕在で、朝食の時には、何も話されません。永年の積み重ねで何も言わなくても、察している雰囲気でした。
A(マーコ・ロランセン):監督から脚本を見せられた時、日本映画を撮るんだねと言いました。デンマーク映画では、あまりこういう作品を撮りません。ただ、作品はユニバーサルな創りになっています。

静かな映像に衝撃を受けた瞬間

東京国際映画祭のコンペティションに選ばれる作品は、ワールドプレミアやアジアプレミアであるものが基本なので、日本のメディアを含め、初めて観る方がほとんどである。そんなまっさらな状態でこの作品を観た編集部は、冒頭の30分を観て、衝撃を受けた。これは、映画だ、と当たり前のことだけれど、その当たり前のことを感じさせてくれた。この作品は叔父と姪の物語だが、冒頭の30分は、その空気感を見事に伝える演出になっていたからだ。

現実と非現実の狭間で

2019年の東京国際映画祭では、ドキュメンタリーの話題作が上映されたり、フィリピンからモキュメンタリーの傑作が上陸したり、フィンクションとは何かと考える良い機会になる映画祭だった。この作品では、姪の俳優と俳優ではない実の叔父さんがキャスティングされている。セリフは99%台本であると監督は答えているが、関係性や空気感は、現実の叔父の姪の現実の関係性が溢れ出ていて、そのバランスがこの作品の素晴らしさに寄与していることは、観ればわかる。

作品全体として

コンペティション作品の多くを観て、編集部としては、本作品がグランプリかなと感じていて、上映後のSNSでのコメント等の動きを観ていても、同様に観客の評価が高かった。ただ、映画祭のグランプリは審査員が審査するものだから、必ずしも観客の反応がそのまま結果に結びつくことはない。そんな中で、この作品は見事に東京グランプリを受賞した。これは、作品自体が優れていて、また、それを観客も理解し、そして、審査員も同様に評価したことを意味している。2019年の映画祭は、そのように映画を通じて、皆がシンクロした瞬間であり、その中心にあった作品である。ぜひ、この作品が日本でも公開され、皆さんにも一体感を共有して欲しいと考えている。おススメ作品。

『わたしの叔父さん』東京国際映画祭作品紹介ページ
https://2019.tiff-jp.net/ja/lineup/film/32CMP14

『わたしの叔父さん』Uncle(IMDB)
https://www.imdb.com/title/tt7523172/

第32回 東京国際映画祭 特集ページ
https://www.lifewithmovies.com/2019/10/tokyo-international-film-Festival.html

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